ACTの周辺の福祉的支援って何?

 昨日、寝屋川の保健所の主催で花園大学の三品先生の「イギリスにおける精神障害のある人への地域生活支援ACTを中心に」という研修会が行われて、参加してきた。
 ACT=Assertive Community Treatment。日本でも先駆的に行われているACT-Kにも取り組まれていて、イギリスのバーミングガム、アメリカのインディアナ州、そして日本の話を、2時間あまりたっぷりときかせていただいた。

 あらためて書くまでもないかもしれないが、とみた自身は、ACTや包括的な地域生活支援、「ケアマネジメント」といった用語が先んじる議論はきらいである。昨日の三品先生のお話はたいへん勉強になったし、興味深かったが、だからといって、ACTはすばららしいというつもりはサラサラない。

 昨年の夏に聞きに行った 日本外来精神医学学会での西田先生のイギリスの話。早期支援・早期介入=日本外来精神医学学会にいってでのロンドンの話と、昨日の三品先生のバーミングガムの話。がリンクして、イギリスがNHSの中で精神医療に関して何をしようとしているのかがとてもよくわかった。たまに読む高齢者のケアマネジメント論のカリスマの一人竹内孝仁氏のニューキャッスルのケアマネジメントの変化の話ともオーバーラップする。要するにコミュニティケアの実現のためのミクロとメゾレベルの方法論と政策展開である。三品先生の「とにかく入院させない」と何度となく、繰り返されたことばが印象的だった。私の理解ではACTはケアマネジメントではなく、危機介入モデルの包括的チームアプローチモデルでしかない。そういった意味で、医療が福祉を包含したという言い方は正確ではなく、「医療と福祉の統合的な地域生活の場における医療支援」というように思った。三品先生は、ACTは地域医療ではなく、生活支援だといわれていたが、私にはそうは思えなかった。地域生活の場での医療支援という言い方の方が私にはぴったりきた。
 
 その話をききながら、逆に、福祉のことを考えた。イギリス的な言い方をすれば、ソーシャルサービスになるだろうか。研究をされている諸氏の中で、ご存知の方はぜひ教えていただきたい。継続的に支援を必要とする人たちの生活支援を。
 昨日のACTの話でもアメリカでもイギリスでも形は違えどピアサポートの重要性が説かれていた。そこには、おそらくリカバリーをした先の「生活者」としてのロールモデルとしての役割を期待しているのだろうと思えた。ノーマライゼーションの思想を持ち出すまでもなく、この30年の世界の障害者福祉の趨勢はインクルージョンである。特別な支援の場ではなく、地域社会の中での【生活者】としての生活である。しかし、精神障害者であろうと、身体、知的障害者であろうと、継続的に【生活者】として生活するために支援を必要とされる方は数多い。権利擁護、経済的な支援、住居、生活支援(介助)、就労、教育、移動など。日本では、まだ、特別な福祉(関連領域)として語られる分野である。では、ACTやイギリスの危機介入モデルの周辺部の【生活者】としての支援が見えない。一市民、一【生活者】としての地域社会で暮らすための支援の実態を誰か教えて下さらないだろうか。それこそが、本来、日本でいう「福祉」関係者が知りたいことなんじゃないのかなぁ。