障害者自立支援法を総括してみる(2)

1.日本の障害者福祉施策において、支援費制度、そして障害者自立支援法は、多くの論者がすでにいろいろと書き連ねているように、社会福祉基礎構造改革の中から生まれた。(たとえば茨木尚子「社会福祉基礎構造改革の展開と問題点」『障害者総合福祉サービス法の展望』所収)ここではこのことについて、その是非や構造を分析するつもりはなく、事実としてこのことを抑えておく。
 2000年に施行された介護保険は、日本の社会福祉基礎構造改革からまさに生み出されたものであり、社会保険の仕組みといいながら、半額を税財源で担っているなんとも日本特有な介護支援の仕組みを作り出した。しかし、ここで注意したいのは、介護保険は、日本の厚生行政からすれば、大成功例だということである。この仕組みは、成立数年前から、介護保険の導入のために、多額の財源が投入され、インフラが整備され、さらに、民間の営利会社がその市場的手法をもちい、大々的に広報をし、介護保険事業を「市場のもの」とした。そして、それまでの申請主義にもとづいて、ハードルの高い役所の窓口にいって、家庭内の詳しい事情まで一から説明をして、頭を下げて支援をうけていたものが、ケアマネージャー(居宅介護支援員)という営業マンが、手取り足取り地域の中をくまなく歩き、代行し、サービスをすすめてくれる。
こんないい仕組みはない、というのが、障害者自立支援法を作った人たちの2003年当時の実感だったのではないだろうか。「だから同じ仕組みにしようとした」に過ぎない、と私自身は評価している。
その後の介護保険制度迷走をはたして、介護保険の設計者たちはどのように思っているのか、最近めっきり発言が減っている人たちだが。

そうして、障害者施策が社会保障の枠組みの中で議論されるようになった。
 私は、支援費制度を経て障害者自立支援法にいたって、ようやく障害者施策の話が、日本の社会保障制度の中で、きちんとその位置づけを語られるようになったと思っている。そのことについては、利点と欠点があるので、評価は難しい部分があるが、今後のことを思えば、それは必要なことであると思う。当事者にとっては、この間の制度の迷走はたまったものではないが、社会保障のひとつの分野として、日本の障害者施策がどのような位置づけをもつものであるのか、ようやく議論の入り口に立てているように思う。
 このことは、最後にくわしくふれていきたいとおもう。

次回からは、細かいミクロな点について総括していきたいと思います。